第1回のコラムでは、技術士が単なる「知識の証明」ではなく、高度な専門知識を応用して現場を引っ張る「指導的技術者」の証であることをお伝えしました。
今回は、私自身の専門でもある「電気電子部門」の実態と、技術士試験を突破するための最大の鍵となる「コンピテンシー(資質能力)」について、令和8年度の大幅改訂のポイントも交えながら深掘りしていきます。
1. 技術士合格に向けて
技術士の専門領域は21の技術部門に分かれています。その中でも「電気電子部門」は、電力インフラ、情報通信網、半導体からビルの電気設備までを担当し、現代社会のインフラと最先端産業を根底から支える重要な部門です。
しかし、その合格への道のりは決して平坦ではありません。
- 一次試験の合格率:過去9年間の平均合格率が43.1%と比較的高めであり、基礎的な学力が問われます。
- 二次試験の合格率:例年10%前後で推移する超難関部門となります(令和7年度は10.1%、令和6年度は9.1%)。
一次試験は電気の基礎知識が身について入れば、合格は十分可能です。しかし、二次試験では、9割が不合格となる現実があります。この壁を越えるためには、専門知識の深さだけではなく、「技術士としての考え方」を身につける必要があるのです。
2. 試験突破の最大の鍵:「コンピテンシー(資質能力)」
二次試験の採点者は、提出された論文や口頭試験を通して、受験者に技術士としての「資質能力(コンピテンシー)」が十分に備わっているかを確認しています。
これは、国際エンジニアリング連合(IEA)が定める「専門職としての知識・能力(PC)」に基づいた、国際的にも通用する評価基準です。文部科学省は、技術士が最低限備えるべき資質能力として、以下の8項目を定義しています。
- 専門的学識
- 問題解決
- マネジメント
- 評価・分析
- コミュニケーション
- リーダーシップ
- 技術者倫理
- 継続研鑽
技術士試験の合格基準は、これらのコンピテンシー(IEA PC)を満足していることを証明することに他なりません。
3. 必見!「令和8年度改訂」で求められる新たな視点
令和8年度(2026年度)の第二次試験より、このコンピテンシーの定義が大幅に改訂・適用されることが文部科学省の技術士分科会で了承されています。
試験の本質そのものが激変するわけではありませんが、時代に合わせた以下のような新たな視点が明文化されており、これらを論文や面接でアピールすることが合格への絶対条件となります。
- データ・情報技術の活用と協働
- 「問題解決」において、「データ・情報技術を活用して定義し」という文言が追加されました。
- 「コミュニケーション」では、情報技術を活用し、多様な関係者と「包括的な」意思疎通を図り、「協働すること」が新たに明記されています。
- 全体デザインとリーダーシップ
- 「リーダーシップ」において、業務遂行にあたり「明確なデザイン」と現場感覚を持ち、利害等を調整し取りまとめることが求められます。
- 持続可能性と自己責任の明確化(技術者倫理)
- 社会、経済、環境に対する影響を予見し、「持続可能な成果の達成を目指し」行動することが追加されました。
- 自らの業務と責任の範囲を明確にし、「これらの責任を負うこと」が明記され、行政任せにしない自己決定の姿勢が問われます。また、文化的価値を尊重することも求められます。
- 変化への適応(継続研鑽)
- CPD(継続教育)活動を通じて、「新しい技術とともに絶えず変化し続ける仕事の性質に適応する能力を高めること」へと定義が大幅に刷新されました。
4. 実務経験をコンピテンシーに結びつける思考法
日々のルーチンワークをこなすだけでは、技術士試験には受かりません。大切なのは、自身の業務経験を上記のコンピテンシーに結びつけて「棚卸し」することです。
例えば、論文の中で「最新のICT技術や3次元設計を活用して〜」と記述することは、単なるツールの活用・説明だけでなく、「情報技術の活用」や変化に適応する「継続研鑽」の姿勢を示すことが必要です。
自身の経験を「技術士のフィルター(コンピテンシー)」を通して語れるようになること。それが電気電子部門の「10%の壁」を打ち破る最大の鍵なのです。
【次回予告】
第3回では、多忙な中堅技術者がいかにしてこのコンピテンシーを紙面で表現するか、「書けない」を克服する論文対策と、口頭試験のシナリオとなる「業務経歴票」の極意について解説します。